2020.12.18

体操着から卒業証書⁉ゴミから資産を生み出すビジネスモデル、サーキュラーエコノミーとは?

4.質の高い教育をみんなに 6.安全な水とトイレを世界中に 9.産業と技術革新の基盤をつくろう 12.つくる責任つかう責任 15.陸の豊かさも守ろう 17.パートナーシップで目標を達成しよう

シェアサービスを利用したことがある方は、「サーキュラーエコノミー」という言葉を聞いたことがある!という方もいるのではないでしょうか?なぜ、今この言葉が注目されているのでしょうか?

それはゴミ問題と経済が密接に関わっているからです。 実際にサーキュラーエコノミー(循環型経済)に取り組む企業から、シェアだけにとどまらないサステナブルなアイデアをご紹介します。

人口は減少、ゴミは増量=ゴミ問題は財政問題!



新型コロナウィルスの影響で、デリバリーなどの巣ごもり需要が高まり、家庭ゴミの排出量は急増しました。外出自粛期間をきっかけに家庭の不要なものを整理、処理する断捨離をした人も多いのでは?

人口減少で税収が減り続ける中、環境省の発表によれば日本のゴミ総排出量は、なんと、東京ドーム約115杯分!(4,272万トン)令和2年3月30日環境省発表。

1年に費やすゴミ処理事業経費は少しずつ増えており、年間およそ2兆円にも及ぶ(2兆910 億円)。自治体によって事情は異なりますが、人口減少などから地方財政がひっ迫する中、コロナ禍でのゴミの増加は、地方自治体の財政をさらに悪化させかねません。

また、最終処分場の残余容量と最終処分場の数は年々減少傾向にあり、このままのペースでゴミを捨て続けると、21年後には日本のゴミ処理場がいっぱいに!ゴミの問題はそれだけ深刻化しているのです。

ゴミから富を生み、環境をも守る新しいビジネスモデル!



大量消費、大量生産社会が環境や人の健康に害を及ぼしていることから、継続可能なビジネスへの関心が高まり、環境を配慮し通常ゴミとして処分されてしまうものから富を生み出す新しいビジネスモデル、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に取り組む企業が増えてきています。 

限られた資源を有効活用し、環境への負担を最小限に抑えると同時に、経済効果を生み出す方法として発案されたのがサーキュラーエコノミーです。

昨今、国内でもビジネスオーナーの関心を引いているSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとしても注目されています!今回ご紹介する株式会社 優良パルプもサーキュラーエコノミーのビジネスモデルを実践している企業の一つ。

パルプとは?



パルプとは、紙を作るための原料のこと。

通常、紙の原料は木材や古紙などが使用されます。高温、高圧で原料を煮ることで木材や古紙を繊維状にし、異物を取り除いて色素を漂白する工程が一般的なため、薬品をおおく使用します。

薬品の使用により紙をつくる工程には有害な廃液が大量に発生し、またその排水を処理する為の装置に莫大な費用を必要とします。

紙すきという伝統と技術革新



日本の和紙をつくる技術「紙すき」という技術を聞いたことはありますか?

この「紙すき」という和紙の製作工程には、熱も化学的な薬品も一切使用しません。繊維となる「こうぞ」と繋ぎとなる「トロロアオイ」という植物由来の天然素材と、綺麗で冷たい水だけでつくられます。

優良パルプの紙をつくる工程は、現在一般的な熱や薬物を使用した加工方法ではなく、日本の伝統的な紙すきのアイデアを活かしつつ、技術革新によって薬品や熱を一切使用しない、水の力だけで紙をつくることを可能にしました。

ただのゴミだった『優良』パルプの環境に優しくて良質な素材



「紙すき」の起源を振り返ると、元々は『ボロ』と呼ばれるボロボロの布、つまり『ゴミ』から紙をつくったのがはじまりだということは知ってましたか?優良パルプが使用している紙をつくるために使用している素材は、

・パンダの餌である笹の食べ残し(フードロス)
・母の日で売れ残ったカーネーション(ロスフラワー)
・着なくなった体操着やジーンズなどの古着
・愛知万博で使用したテント 

など、企業や個人が不要となって廃棄されるはずだったゴミ。

その中でもユニークな取り組みは、小・中学校を卒業し着なくなった体操着や授業で使用していたノート、校庭の桜を剪定した枝など『ゴミ』として捨てるのはもったいないけれど、他に使い道のないものを、『思い出の詰まった価値ある素材』として見立てなおし、素材を提供してくれた学生の卒業証書として新しい価値を生み出す『紙すき卒業証書』


学生自身が紙すきを体験し、物を大切にする気持ちや、違った視点でものを見ることで、新しい価値や使い道を見出すという3R、5Rの考え方にも通じる『紙すき卒業証書』の活動は、優良パルプが立ち上げた、NPO法人森を守る紙の会(Save the Forest with Paper)が主催しています。

株式会社でありながらNPO法人を立ち上げた優良パルプ。紙すきが元々ゴミを再利用、有効活用して新しい価値のあるものにつくりかえるという、元祖サーキュラーエコノミーだったように、

「環境や人にいいこと=慈善活動」
「お金や価値を生むこと=企業活動」ではなく、
「環境や人にいいこと=お金や価値を生むこと」だったのではないでしょうか?

木を使って森を守る



『木を使うのに森を守る』って矛盾しているように感じませんか?

林野庁によると、日本の国土面積の約7割を森林が占めており、そのうち人工林の面積は全体の約4割もしめています。

日本では、戦時中や戦後の過度な伐採により荒れ果ててしまった森林の復旧や、高度経済成長期における木材需要の増大など、各時代の社会・経済的要請に応えるため、木材として好まれ、成長が早く、日本の自然環境に広く適応できるスギ・ヒノキの造林を推進してきました。

ところが、現在では木材の約8割を輸入に頼っているのが現状です。 そのため、人工林は手入れされないまま放置されてしまっています。木は間伐しなければ、木の葉によって日光が遮られ、下草が枯れ、 土がやせてしまい、遂には木が育たなくなってしまいます。

「間伐」は日本の森林を守る、自然環境を守るという意味において非常に大切な行為とされています。 同時に、その間伐された間伐材をゴミとして捨てるのではなく、有効活用をする方法を考えていかなければなりません。 


そこで生まれたのは、「東京の木の紙」

東京に森なんてあったかな?
と思う人も多いと思いますが、東京多摩地区には5万3000ヘクタールの森林があり、山手線内側の約8倍の広さに相当します!優良パルプは、この「東京の木の紙」というプロジェクトにも参画しています。

「東京の木の紙」は、優良パルプで使用している技術と同様の非加熱で化学薬品を使用しない、和紙の紙すきと同じ伝統技術を活かしながら、環境に負担の少ない加工方法でつくられています。

東京近辺の企業をはじめ、この「東京の木の紙」を使用することで、森を守り、国内の林業を支えるという地域経済を循環させています。



今回は、ゴミから資産を生み出す新しいビジネスモデル、サーキュラーエコノミーをご紹介しました。

新しいビジネスモデルと聞くと、「全く新しいこと」「イノベーションを起こすこと」、誰にでもできることではないと感じてしまいがちですが、今回ご紹介した優良パルプの例をとってみると、私たちの先輩達の少し前のライフスタイルであったり、「物を大切にする」という当たり前のことをもう一度見つめ直すことからヒントが得られるかもしれませんね!

参考サイト:SDGs取り組み企業 株式会社優良パルプ